私達の皮膚は正常の状態から20%も引っ張れば相当痛く感じます。
それを無視してどんどん引っ張り続け、皮膚がぴりっと裂けたとき、皮膚の最大伸展能力の100%を越えた力が加わったことになります。
お産の時にはしばしば皮膚や筋肉や靭帯が切れてしまうことがあります。
会陰切開は必ず裂けてしまうことを前提とした処置です。もしもお産が最大能力の20〜30%で行われる生理現象ならば会陰裂傷は起きない筈です。
また、分娩の時に産婦さんが痛さのあまりに握っている青竹を握りつぶしてしまうという現象も痛みが生理的な範囲をはるかに越えたものだということを物語っています。
つまり分娩は機能的最大能力の20〜30%で営まれる生理現象などではなく最大能力100±α%で成立する非生理現象だと認識したうえで分娩を介助しなければならないと思います。
産道通過性を100とした場合、赤ちゃんの大きさが99であれば、上手にいきみをリードすれば産道や赤ちゃんに損傷は起こらないはずなのです。
しかし、赤ちゃんが101以上の大きさであれば、産道の筋肉を100%弛緩させてどんなに上手にリードしても裂傷やその程度によっては恥骨結合離開などの母体の損傷、それがなければその代償としての赤ちゃんへの強い圧迫による過負荷が生じてしまいます。
田中ウイメンズクリニックでは始めから会陰切開を行いません。
麻酔、会陰マッサージによって筋肉や皮膚の伸展性を100%引き出し、痛さによって無我夢中で力むのをやめれば赤ちゃんの対産道99%のお産は裂傷を起こさないはずだからです。
しかしながら対産道101%以上ではどんなに上手にリードしても切れてしまうので、当院のお産では約半数が裂傷なし、半数は会陰切開が加えられています。
近年女性の社会進出がめざましいのは非常に喜ばしいことですが、その結果、高齢初産が増加している傾向は産科医にとっては、クリアすべきハードルが高くなるということになります。。
何故なら人間も動物の一種である以上、子孫を残すのに最も適した年齢というものがあり、それは20代の前半なのです。同じ女性なら25歳で産むのと35歳で初産を迎えるのとでは難易に格段の差があり、後者では別人のように不利な要素が多くなります。
たとえば軟産道の伸展性の低下などは代表的な例です。例えば一本の筋繊維が断裂するために要する「引っ張る力」は、10代の筋繊維は19グラム、20代では15グラム、30代はたった13グラムの力で切れてしまうからです。この事実は加令によって軟産道の筋群の伸展性がいかに低下するか、靭帯で連結されている骨盤の拡張性がいかに少なくなるかを物語っています。従って35歳の初産の方は、妊娠中に体を10才若くする努力をし25歳相当のお産を実現して欲しいと思うのです。それは妊娠中に良く体を動かし汗を流すことによって達成されます。