
※マイナートラブルとは妊婦全般に起こりやすい異常で重大事には直接結びつかないものです。
【つわり】
朝の目覚めや空腹の時に、多くの妊婦が経験する悪心、吐き気、嘔吐、食欲不振、食べ物の好みの変化などを【つわり】と言います。
この症状が悪化すると体重減少、脱水(栄養障害、代謝障害)を招きごくまれに、命に危険を及ぼすようなこともあります。その状態を重症妊娠悪阻と呼びます source。
●食べたいと思ったものを少しづつでもいいから頻繁に食べ、空腹になりきってしまわないように工夫しましょう!氷をしゃぶって水分を補給して下さい。
【静脈瘤】
下半身(下肢・外陰部・肛門部・膣壁など)の大静脈の領域にできてしまう静脈のみみずばれが【静脈瘤】です。
妊娠することで起こる骨盤内臓器の充血、下半身の静脈のうっ滞、むくみ、静脈壁のゆるみなどが直接の原因ですが体質的な要因もあります。症状としては重苦しさや圧迫感、パンパンになったような感じ、熱いような痛み、知覚異常などで、長時間立ちっぱなしでいると悪化してしまいます。また、血栓性静脈炎が発生すると赤くなって腫れたり、発熱したりします。分娩の時に破裂して大出血をおこすこともあり、症状が強い場合は分娩後に手術をすることもあります。ほとんどの場合、分娩の後に軽くなったり消えてしまったりしますが、妊娠・分娩を繰り返すたびに悪化してしまいます。
●体重の増えすぎに気をつけて、便通を整えましょう! ●適度な運動をし、立ちっぱなしを避けましょう! ●就寝するとき脚を高めにして寝るとよいでしょう! ●弾力性のあるストッキングを着用しましょう! ●お風呂に入ったときにマッサージをしたり温湿布をしましょう! ●ビタミンB・C・Kの摂取を心がけましょう! ●分娩の後、早い時期に床上げするよう努めましょう!
【腹緊】(お腹の張り)
妊娠20週頃から子宮が収縮すると妊婦はお腹が張ったように感じ、収縮が強い場合は痛さとして感じます。これを【腹緊】といいます。妊娠31〜32週にピークがあり、33〜37週頃はあまり張らなくなります。その後多くの妊婦は38週頃から再び強く張り始めます。37週より前に強い張りが頻繁に起こるような場合はお医者様に相談して切迫早産の徴候がないか確かめてもらいましょう。強い張りを感じても破水や出血が無く、内診しても子宮口が閉じているようなら早産の引き金となる子宮収縮ではありません。
【妊娠線】
妊娠30週頃から下腹部、乳房、大腿部、お尻の皮膚に幅5〜6mmの赤褐色の線ができる事があります。これが【妊娠線】です。これは皮下脂肪が増えることで皮膚が急に伸ばされてしまい、皮膚を保護する弾力繊維が裂けてしまってできるものです。一度できてしまうと産んだ後にも光沢のある白色のしわとして残ってしまいます。
●運動(エネルギー消費)と栄養(エネルギー摂取)のバランスをとり、太りすぎないことが大切です。
●まだお腹が大きくならない妊娠4ヶ月頃から妊娠線予防のクリームなどを塗って皮膚(できやすい部分)をよくマッサージし、保湿と皮膚の血行をよくしておくとよいでしょう!
【便秘】
排便の頻度が少ないため便の中の水分が減少して固くなり排便が困難になってしまう状態、排便していてもなお便が残っているように感じる状態を【便秘】といいます。たとえ2日に1回しか排便していなくても前述のようでなければ便秘ではありませんが、毎日排便していても少量で前述のような苦痛があれば便秘と言えます。
妊婦の約40%は便秘を訴えており、妊婦のマイナートラブルの中では腰背痛の次に多く見受けられます。妊婦が便秘になると自律神経が不安定になりがちで、産後も分娩の時の会陰切開や会陰裂傷、脱肛、痔による排便時の痛みの恐怖から便意が抑制されてますます便秘になりやすいのです。
便秘の主な原因には以下のようなものがあります。
- 運動不足
- 過食
- 食物繊維の摂取不足
- 便意を感じてもすぐに排便する習慣がない
特に妊婦の場合は- 運動量の低下と食事の変化
- つわりによる食物摂取不足
- 妊娠黄体や胎盤から分泌される黄体ホルモンの増加で腸の筋肉がゆるむ
- 急激に子宮が大きくなることで腸が圧迫され、横隔膜が上がり、腹筋が伸びて腹圧が低下する
出産後- 分娩時の会陰裂傷による排便時の痛みへの恐怖感から便意を抑制してしまう
などの要因によって便秘が悪化することが多いようです。
●運動の習慣をつけましょう!→持久性の全身運動や腹筋の強化、腹式深呼吸など。
●食習慣を見直しましょう!→繊維質を多く含む食品を多く摂ります。ex.根菜類(ごぼう、さつまいも等)海藻類(ひじき、わかめ等)果物類(バナナ、キウィ等)朝起きたら良質の水を500ml位飲みましょう。
●排便の習慣をつけましょう!→食後には時間をかけて排便を心がけ、便意を感じたら我慢せずにすぐトイレに行きます。
●コーヒー浣腸で腸をきれいにして宿便をなくしましょう。
●ガンコな時は薬を飲みましょう!→とは言っても下剤を飲むのは一時しのぎ…。便秘そのものを治すわけではなく、連用すると効果が減ってしまいます。前述の根本的な治療を心がけ、薬は補助的に利用するべきでしょう。
【痔】
【痔】とは内痔核、外痔核、脱肛、裂肛、痔瘻の総称です。その中で特になりやすいのは内痔核と外痔核。そもそも痔核とは直腸肛門のまわりの血液の循環障害によってできる静脈瘤の一種なのです。便秘や下痢など便通が整っていないと上直腸静脈の血の巡りが悪くなり、それによって直腸肛門の静脈が圧迫され、静脈壁が拡がってしまうことで発生します。妊娠後期に発症することが多く、外痔核の場合は血栓ができ周囲が腫れて痛みます。妊娠末期になると黄体ホルモンが増加して末梢血管系が弛み、循環する血液の量も増え、さらに大きくなった子宮による下大静脈の圧迫や便秘による影響などを受けて、症状が悪化しやすくなります。さらに分娩は痔に最も悪いことをするわけで産後の苦痛の最も大きな要因となります。
●入浴時、肛門周囲を皮脂を残す入浴剤を使い手指でそっと洗います。軽く水分を取ってスクワラン、オリーヴ油、コールドクリーム等をたっぷり塗り20分位下着をつけないようにします。
●排便の習慣をつけましょう!→便通を整えて便秘を予防するのが第一!排便のときにいきみすぎるのもひかえます。
●過食を避け、食物繊維を充分摂りましょう!
●持久性の全身運動を生活に取り入れましょう!→マタニティビクスやジョギングはまさに最適。静脈の流れを促し、肛門部のゆるんだ組織や括約筋を鍛え局所の血液の流れを改善するためのエクササイズを行います。
●薬を利用しましょう!→薬には内服薬、座薬、軟膏などがあります。
【腰背痛】
腰や背中の痛みは妊婦のマイナートラブルの中で最も頻繁に起こりやすい症状です。
程度の差はありますが妊娠末期にはほとんどの妊婦が【腰背痛】を訴えています。子宮が大きくなって重くなったお腹を腰や背中の筋肉が支えようとして緊張するため立っている妊婦の重心は後方に傾むいて反り身になってしまいます。そのうえ腹筋の筋力も低下しているので腰と背中の筋肉はさらに緊張を強いられます。その結果筋肉に流れる血液が減少して筋肉疲労となり、ホルモンの影響による骨盤関節のゆるみも加わって痛みが起こるのです。
●背骨をまっすぐにした姿勢を保つように努力しましょう! ●マタニティビクス(腰背筋、腹筋のトレーニング)を積極的に行いましょう! ●寝具は固めにし、フカフカのベッドは避けましょう! ●温めたりマッサージをしましょう!
●ガードルを履きましょう!
●一時しのぎですが痛みがひどい時はお医者様に鎮痛剤をもらいましょう!
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