産むときゃどーなる?

〜正常分娩の進み方〜
全国の妊Pの皆さん、体調はいかがですか?
さあ、今月は皆さんにとっては最大の関心事である
「分娩」についてのお話をいたしましょう。
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ところで「分娩」とはどこからどこまでの事を言うのかご存じですか?
医学的に言っちゃいますとね、分娩とは
胎児とその付属物(胎盤、臍帯、羊水、卵膜)が、
陣痛や腹圧によって産道を通り抜けて母体の外へ押し出されること
でして、
【陣痛の始まりから胎盤が排出されるまで】のことを言うんです。
それでは正常な分娩とはどのようにして進んで行くのかを
イラストを交えてご説明して行きますね。

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1.出産の前ぶれ

まず「分娩」が始まる前(特に初産の場合)は、「もーすぐだぞ!!」という事を知らせるいくつかの症状があらわれます。大体次のような順番で陣痛発来に至ります。

1) まず胃の圧迫感がなくなって、呼吸が楽になる。(赤ちゃんが下がってきた証拠)[陣痛]
2) おしっこがますます近くなる。足の付け根がつっぱって歩きにくくなったり、足がつりやすくなる。(下の方に圧迫が移る)
3)子宮が収縮するにつれて、赤ちゃんの頭が骨盤の中にはまってくるので胎動が少なくなる。
4)お腹が張りやすくなる。特に夜中に張りが強くなり、目をさましたりする。その上、ゼリー状のどろっとしたおりものが増えてくると、かなり近い状態です。そのおりものに色(茶〜赤)がつけばいわゆる「おしるし」なワケで、もうすぐ分娩が始まるぞお!というお知らせ。
赤ちゃんおでましの合図はこのような順序を踏む場合が多いのです。心づもりをお願いします。

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2.分娩第1期

分娩は進行するに従って第1期から第3期に分けられます。
で、第1期とは【陣痛開始から子宮口全開まで】を言いまして、開口期とも呼ばれています。あの陣痛の苦しみってのは主にこの第1期に味わうことになるわけなんです…むむむ。

1) 陣痛は最初、規則的な8〜10分間隔で10〜20秒の痛みから始まる場合が多い。で、だんだんと痛い時間が長くなり、痛くない間隔が短くなる…むぐぐぐぐ。[sikyu]
2) 分娩第1期の終わりには、子宮口は約10センチになる。
これが子宮口の全開大…ぐぅぅぅぅ。
3)この頃には自然に破水して、羊水が流れ出る場合が多い。

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3.分娩第2期

分娩第2期とは、【子宮口が全開してから赤ちゃんを外に産み出すまで】を言いまして娩出期とも呼びます。
さあ、ここまできたらもうひと頑張りです。

1)分娩第2期の終わり頃には陣痛がますます強くなり(がーん!!)自然にいきみたくなる。
2)胎児は頭をクルリと回旋させてぎりっぎりの狭い産道を通り抜ける。

はい、それではここで赤ちゃん自身が狭い産道を通り抜ける時のウルトラ必殺技を解説しましょう。
なんせ赤ちゃんが通過しなくちゃならない産道は曲がった円筒状…。しかもカーブしてるだけではなく産道の部分によって広さや形も違うのです。入り口は横長の楕円なのに出口は縦長の楕円なんですよォ!


赤ちゃんの頭は前後に長い楕円形をしています。ですんで赤ちゃんはまず横長の楕円である産道の入り口に入るために、頭を横にしてあごをひき背中を丸めた屈曲位の姿勢をとります。
これが〈第1回旋〉です。
[bunben1]

[bunben2]その後、赤ちゃんはカーブした骨盤の中を降りながら頭を90°回旋させて母体の背中側を向き、産道の出口の縦長の楕円形に頭を合わせます。
これが〈第2回旋〉。
[bunben3]

[bunben4]そして、ここからがスゴイっすよ。
後頭結節が母体の恥骨結合の真下にきたところで、後頭部を支点にしてうつむいている顔を上に向けて頭を反らし、さらに!
頭の骨の継ぎ目を互いに重ね合わせ、頭の周径をできるだけ小さくして(これを児頭応形機能と言います。)自らの一番硬くて大きい頭を母体の外へひり出すのです。これが〈第3回旋〉。
この時、母体側は骨盤のつなぎ目である恥骨結合や仙腸関節の靭帯がゆるんで骨産道を拡げ、赤ちゃんの頭が通り抜けるのを助けています。

引き続き赤ちゃんは自分の肩を出すためにもう1度体を90°回旋させて横向きになります。
これが〈第4回旋〉。

こうして赤ちゃんは出口である縦長の楕円を通過して無事誕生するのです。
パチパチパチ!!

[bunben5]
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4.分娩第3期

うっし!赤ちゃんは無事に誕生だぁ。
おっと、でもまだ終わりじゃないんですよーん。【赤ちゃんを外に産み出して、胎盤を排出するまで】を分娩第3期と言い、後産期とも呼びます。

1)赤ちゃんを産み出した後の子宮は急速に収縮して、胎盤が子宮壁からはがれる。
2)胎盤のはがれた所から出血があるが、裂傷などがなくて分娩直後の子宮収縮がいいと出血量は少なくてすむ。

長々と説明しちゃいましたが、以上が正常分娩の流れです。
曲がりくねった狭いイバラの道を通り抜けるために赤ちゃん自身もクルリと何度も回転したり、体や頭を曲げたり反らしたり、おまけに骨をズラして頭のサイズまで変えちゃうわけで、大変な努力をしてるわけなんですねェ。しみじみ。
それでも、完全に通り抜けるためには子宮の収縮だけじゃなかなか前に進めないんです。そこで周囲からさらに圧迫を加えて子宮内部の圧力を高めるために、お母さんのいきみの動作が必要になってくるわけです。赤ちゃんが産まれる直前にはこのいきみが陣痛に加わります。
こんな具合に赤ちゃんとお母さんによる必死の共同作業があってこそ分娩はスムーズに進行します。
いきむ(腹圧を高める)ためには腹筋と横隔膜の筋力はとっても重要となるわけです。

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5.分娩時間

これは、個人差が大きく、分娩様式によっても差があるので平均時間は参考程度にしか言えないのですが

  • 初産婦…12〜16時間
  • 経産婦…5〜7時間
というところでしょう。
ちなみに妊娠中に安静にばかりしてた人や肥満妊婦は陣痛が弱くて分娩時間が長引いたり(微弱陣痛)、産後の子宮収縮が弱くて後出血が異常に多くなったり(弛緩性出血)する傾向がありますねェ。
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6.分娩の三要素

最後にお産に必要な3要素を申し上げますと

  1. お母さんの産み出す力(子宮収縮と腹圧)
  2. 胎児が通り抜けられる広さ(軟産道・骨産道)
  3. 胎児の大きさ(胎児の回旋)
となっております。
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いずれにしても、「分娩」とは人間にとっちゃ
まさにギリギリの仕事。
お母さんと赤ちゃんが力を合わせて
最大の努力をして、
やっと成し遂げられる一大事業なんですよね。
[sango]
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