3.産む日って選べるの?
(選択的無痛分娩)

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3-1.成熟期誘導・誘発分娩とは

 自然の分娩を待った場合、全例の約80%は休日や深夜など診療時間外のお産になっています。何故ならば一般の産科施設の診療時間は一年間の時間の中で約20%しか占めていないからです。診療時間外は当直体制と言い、どんな施設でも少ない人数で入院患者の看護に当たっています。そこへとび込んでくるお産は救急医療的な側面をもっています。分娩に伴うトラブルの殆どがこの時間外でのお産で発生しています。大出血などの異常事態が起こると人手不足で対応がおくれたりするためです。
 当院では35週頃から1週間毎に内診を行って分娩準備状態の進み具合を記録し、成熟度の変化から陣痛発来の時期を見極めます。そして自然陣発直前を分娩日に設定します。このように陣発寸前の時期に入院するので、ミニメトロの挿入(4-2参照)や子宮口マッサージ(卵膜剥離)などの前処置で自然に陣発することがしばしばあります。
 この場合を成熟期誘導分娩と言います。このような前処置によって陣痛が発来しない場合には陣痛を誘発するために子宮収縮薬(陣痛促進剤)を使用します(全例の50%)。この場合を成熟期誘発分娩と言います。

人の分娩は知能の発達によって肥大化した頭部がやっと出られる頃に早産をするという「自然の営み」からはみ出した現象(妊P創刊号特集「人間のお産はどうして大変なの?」)なのです。陣痛が始まる前に入院して誘発するのは不自然に見えるかも知れませんが、安全性という点では自然に陣痛がおこって入院する場合よりはるかに有利です。

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3-2.分娩時期の選択とは

分娩の時期(出産日)については、従来の統計的な研究結果と当院の30年の経験から、「安産は分娩予定日の1週間前頃に集中する」ことをパンフレット“当院の分娩様式”の中で詳しく説明していますが、最近の研究発表でも全く同じ結果が出ています。下記の図1、2、3を御参照下さい。

分娩予定日には1週間前後の幅があります。月経周期が常に28日であれば最終月経から280日目を予定日と言いますが、実際の受胎日はかなりずれていることが多く、また個体差があって全例が受胎日から266日目の分娩が最適とは限らないため分娩に適した日は1日ではなく10日〜2週間の幅があるのです。

従って真の分娩予定日の約一週間前(39週0日、双胎は37週0日)を中心に至適分娩日を個々の症例について推定して行く中で、若干の希望日を出して頂き、いづれかの希望日に適合する日を選び出します。但し、赤ちゃんに酸素や栄養を補給している胎盤には寿命があり、ある時期から機能低下を起こして行きますので、予定日を一週間以上超えない分娩をおすすめしています。

分娩の管理 双胎 −適切な娩出時期−
図1:日本人における単胎・多胎別分娩週数分布
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対照は日本で1989-1993年間に26週以降分娩となった単胎児6,020,542名、多胎児88,936名である。多胎児の96%は双胎児である。

図2:単胎における子宮内・外危険度の比較
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N週出生児が生後1週未満で死亡する確率、N週胎児が1週以内に死産する確率、N週出生児が生後4週未満で死亡する確率、N週胎児が4週以内に死産する確率

図3:単胎・多胎(双胎)別、分娩週数別
出産1,000あたりの死産/早期新生児死亡数
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母集団は図1に同じ。は単胎の死産頻度、は多胎(双胎)の死産頻度、は単胎の早期新生児死亡頻度、は多胎(双胎)の早期新生児死亡頻度

図1〜3(水上:産婦人科の実際 vol52,No.12,1893-1898 2003より転載)

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